エータ法律事務所ブログ:相続手続のお話5

みなさんこんにちは。
エータ法律事務所の弁護士政岡です。

 

今回は、相続に関するお話の5回目になります。
前回までに、遺産の範囲や相続人の範囲、
遺産の評価方法、相続人の取り分(相続分)について
ご説明してきました。


今回は、私がセミナーなどを行う際に良く質問がある、
また、参加者の関心が高いと感じることを
少しお話ししようと思います。


それは、すこし生々しいですが、
「あの相続人には何も残したくない!」
と思われている場合の対応方法のことです。


前回もご説明した通り、

今の法律上は、奥さんやご主人などの配偶者がいる場合には、
必ずその人は相続人になります(ちなみに、籍を入れていなければダメです)。


先日お亡くなりになられた俳優Uさんが、
ご逝去当日に長年連れ添われた女性と籍を入れたと報道がありました。


おそらく、その女性に対する感謝の思いを
(その女性や他の相続人などの関係者に)伝え、
明確な形にするために、最後の最後に籍を入れて、
その女性にも遺産が渡るようにされたのではないでしょうか。
 

また、子供がいれば、子供は配偶者と共に相続人になりますし、
子供がいない場合には父母、
父母もいない場合には兄弟姉妹が配偶者と一緒に相続人になります。
 

ただ、この「法律が定めた相続分」(法定相続分と呼ばれます。)は、
あくまで亡くなった方が遺産の処理について何も決めていなかった場合の、
法律が用意しておく分け方となります。

 

第二次大戦後の社会は、家督相続制度は無くなり、
個人自由主義となりましたので、
個人が自分の財産をどう処分しようとそれは基本的に自由です。


ですから、遺言で「法定相続分」と異なる遺産の分け方
を定めることは自由です。


前回ご説明した
「妻1/2、子1/2」という分け方ではなく、
「妻3/4、子1/4」とすることもできます。


また、
「妻3/4、兄弟姉妹1/4」という分け方ではなく、
「妻4/4」とすることも可能です。


ただし、その場合には、
有効な遺言書で明確な意思表示をしておくことが必要ですので、
遺言書を作成するときには形式面にも十分注意する必要があることは、
気を付けておいてください。


また、「基本的には個人の財産は自由に処分できる」ものの、
社会政策的な観点(親族間の公平や扶養という考え方なのだと思います)から
一定の制約があることにも注意する必要があります。


皆さんご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、
「遺留分(いりゅうぶん)」というものです。


一定の相続人に認められている遺留分を侵害するような遺言については、
後で無効となる可能性がありますから、
遺言を作る際には、この点に注意する必要があります。


その割合は、
相続人として残っているものが父母だけの場合は遺産の1/3、
それ以外の場合(つまり妻や子が残っている場合)は1/2となっており、
相続人が複数いる場合には、

この遺留分をベースに更に法定相続分を掛けた割合で相続していくことになります。


この辺りは具体的な事案ごとに考えないと分かりづらいのですが、
紙面の関係もありますので、次回にご説明させていただきますね。