エータ法律事務所ブログ:相続手続きのお話6

みなさんこんにちは。

エータ法律事務所の弁護士政岡です。

 

前回、遺留分(いりゅうぶん)のお話の一環として、

「放蕩息子にどうしても相続させたくない」

ような場合の手続きがあるとご説明しました。

それが、「廃除」(はいじょ)という手続きです。

 

おさらいですが、

民法上では、遺言書で「相続させない」と明記しても、

子供や親、妻(夫)には

「遺留分」(いりゅうぶん)

という最低限の取り分が認められています。

 

しかし、例えば高齢になった親を虐待していた息子とか、

著しい非行があった妻(夫)などに、

遺産を残して亡くなった方の気持ち(遺志)を無視した保護まで

認める必要はありません。

 

そこで、民法892条等では、

相続人の相続資格を剥奪する制度として、

「廃除」(はいじょ)

という制度が設けられました。

 

廃除が認められるのは、相続人が

   被相続人(亡くなった方)に虐待を加えた

   被相続人に重大な侮辱を加えた

   その他の著しい非行があった

場合です。

 

息子とその嫁から長年に亘って虐待【物理的な暴力】や

経済的な非行【ご老人の資産を長男夫婦が使い込んだりして横領】

を受けていたというような場合には、

この廃除の制度の利用が考えられるでしょう。

 

廃除の手続きは、

生前に確定させておく「生前廃除」の方法と、

死後に確定させる「遺言廃除」の方法の二通りがあります。

 

いずれにしても、例外中の例外的な制度なので、

家庭裁判所の審判手続きで厳格に審理されることになります。

 

つまり、いつ如何なる虐待や非行があって、

それが相続資格を奪うに値するようなものなのかを、

証拠に基づいて裁判所が判断していくことになるのです。

 

しかし、被相続人が生前に廃除の手続きを行う場合、

虐待をしている人物から嫌がらせを受けて身の危険を感じたり、

争いが起きてストレスが大きかったりします。

 

そこで、

生前にその審判手続きを行うことが好ましくない場合には

(多くはそうであろうと思います)、

遺言書に「誰々は、かくかくしかじかの非行があったので廃除する」

という記載を行い、

亡くなった後に遺言執行者が

家庭裁判所に廃除審判の申し立てを行うことになります。

 

この廃除の事例は、

実務上でも実際にお目に掛かることは少ないのですが、

以前私がご依頼を受けたことがある案件の中にも、

遺言書中に廃除を明記したことがありました。

 

やはり、生前廃除の手続きをすると、

息子夫婦が逆上して何をするか不安だというので、

生前廃除ではなく

遺言廃除の方が利用しやすいのかもしれません。

 

私が依頼を受けた案件では、

いずれ、私が遺言執行者として、

その依頼者が亡くなった際に廃除の審判手続きを行い、

虐待をした長男夫婦と相対峙することになる予定です。

 

 

相続問題というのは、

人生で必ず一度や二度はご自身の身に降りかかる出来事です。

「人の生き死に」に関することなので、

事前の準備が難しいことでもあるのですが、

可能であれば、早めに弁護士までご相談ください。

 

事前準備次第で、

ご意向に沿う「人生の終わらせ方」

を実現できるかもしれません。