エータ法律事務所ブログ:相続手続きのお話8【遺言書の工夫】

 

皆さんこんにちは。

エータ法律事務所の弁護士政岡です。

 

 

今回は、前回に引き続き、

遺言(ゆいごん、いごん)について

触れてみたいと思います。

 

前回、遺言には、

直筆で書く「自筆証書遺言」と、

公証役場で公証人に作ってもらう「公正証書遺言」

があると説明しました。

 

公証役場で作ってもらうとしても、

遺言を残す人が作成者

ということに変わりはありませんので、

自由に遺言内容を決めることが出来ます。

自由と言っても、紛らわしくて

後々の紛争の種になりかねない文章は

かえって良くありません。

 

公証役場では、

その点のチェックをしてくれるので

安心ということですね。

 

さて、遺言内容の工夫ですが、

例えば、現金や預金であれば、分けるのが簡単なので、

「幾らを長男に、幾らを次男に相続させる」

という遺言でOKですね。

 

では、不動産や株式があった場合はどうなのでしょうか?

 

不動産も株式も,そのままでは

2つや3つに分けることは出来ないことが大半です。

そこで、不動産については、

長男に1/2、次男に1/4、長女に1/4という風に、

持分で相続させることがあります。

 

こういう分け方にせざるを得ない場合が多いのですが、

こういった分け方だと、

「持分は相続したけど実際には長男しか使っていない」

というような場合に、

後日のトラブルが起こりかねません。

 

私のところには、

親が持っていた借家(他人に貸している家)を

兄弟で相続し、

片方が賃料の管理などをしていたが、

「分け前がどうも少ない」とか、

「お金に困っているから売りたいけど、片方が売りたがらない」

等といったご相談が良く寄せられます。

 

複数の人間で共有する形で相続させるというのは、

後々の紛争の種になりかねないんですね。

 

そこで、私は、

遺言書作成のご依頼を頂いた際、

不動産や株式などがある場合には、

状況が許す限り、

 

「不動産は売却し、残った代金のうち

1/2を長男、1/4を次男、1/4を長女に相続させる」

 

というように、

現金化して相続させる遺言の作成を勧めています。

 

また、

どうしても偏った(誰かに有利で誰かに不利)遺言に

せざるを得ない場合もあります。

 

例えば、

長男夫婦が何十年も同居して介護をしてくれたので、

次男よりも長男に多く残したいというような場合です。

 

この時、少ししかもらえない次男は、

当然、不満を抱きます。

 

遺言というのは、(大体の場合)

親が亡くなって子供達に説明が出来なくなってから、

当の子供たちが初めて目にします。

不利な内容の遺言書を見た子供は、

「同居していた長男夫婦が無理やり書かせたんだ」

などと思います。

そうすると、遺言が元で兄弟間の関係が悪くなりかねません。

 

そこで、私は、遺言書の最後に、

「付言事項」(ふげんじこう)といって、

その遺言を書いた動機だったり、

残された家族に対する想いや

お願い事を書いてもらうようにしています。

そこに何かしらのメッセージを遺すことで、

あらぬ誤解や感情的な対立を避けることが出来るのです。

 

 

このように、

遺言書の作成にも色々な工夫があります。

相続の備えとして作った遺言が

将来の身内の争いを起こさない様に、

あらかじめ、

専門家にご相談に来ていただければと思います。