文書の偽造って何?

皆さんこんにちは。弁護士の藤田です。

暑い日々が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。


先日、ある知人の方とお話しする機会があったのですが、

重要な書類であれば、間違えた内容を書いてしまっただけで偽造罪になるのか

と誤解されていた方がいました。


皆さん、偽造罪というものについて、厳密にはお分かりでない方も多いようなので、

今回はちょっと偽造というものについて触れてみたいと思います。



そもそも偽造って何?


 

私生活上で皆さんが文書を書くことがあると思いますが、

刑法には偽造をすれば私文書偽造罪になると書いてあります

(ちなみに役所で公務員が作るような文書を偽造すると公文書偽造罪になります。)。



この日本の刑法で処罰される「偽造」行為というのは、

文書の名義人と作成者の

人格の同一性を偽ることをいうとされています。


つまり、他人の名前を勝手に使って文書を新しく作ってしまうこと

と考えておけばよいでしょう。



他人の名前で作られた文書の内容を勝手に書き換えてしまう行為は

「変造」

といって区別しています。



少し細かい話になりましたが、刑法では基本的に、

この他人の名前を勝手に使う「偽造」や「変造」行為が処罰されています。



皆が勝手に他人の名前で文書を作るようになると、

書かれた文章に対する責任が誰にあるのか分からない文書が氾濫して、

何もかも信用できなくなってしまいますから、

このように考えられています。


 

それに対して、

自分の名前で書いた文書の内容を偽って書く行為は、虚偽文書の作成になりますが、

基本的には処罰されないことになっています。

自分の名前を出して、文章についての責任を明らかにして作成されている点が

「偽造」などとは違いますからね。



例外的に、この虚偽文書の作成行為が処罰されるのは、

役所への戸籍や登記などの手続で嘘の申請書を出してしまう場合や(公正証書原本不実記載罪)、

公務所に提出する診断書に医師が嘘の記載をしてしまう場合(虚偽診断書等作成罪)など、

一定の重要な文書の場合に限られています。


 

ですので、皆さんも、

自分の名前で書いた書類に内容を間違って書いてしまった程度であれば、

特に「偽造」罪になることはないでしょうから、ご安心ください。



ただし、だからといって

意図的に書類へ虚偽の内容を書き込むのは、

別の問題が発生しかねないので、気を付けてくださいね。



その間違った書類を信じこませて、

財産の提供を受けたような場合には、偽造罪ではないですが、

詐欺罪になってしまうとういうこともありますので。



皆さん、偽造罪について、なんとなくイメージがわきましたでしょうか。


日常のことで自分では分かっていたつもりでも、

法律的には違うというのは、よくあることですね。