皆さんこんにちは。
エータ法律事務所の弁護士政岡です。
今回は、今の国会で審議されている労働者派遣法
(「派遣法」)の改正案について、
大まかですが、少し説明したいと思います。
バウル崩壊後のいわゆる「失われた20年」の間に、
産業界では、戦後長らく続いていた雇用環境の維持が不可能となりました。
そして、正社員とは異なる「派遣労働者」が増えました。
派遣労働は、労働者はA社に雇用されて給与を貰いながら、
A社と派遣契約を結んだB社で働くという働き方です。
昔から、このような働き方をしていると中間搾取(ピンハネ)が横行しやすかったため、
それを排除するために、雇用主と実際の使用者が異なる雇用形態は禁止されていました。
しかし、徐々に規制緩和が進み、
限定的に導入された派遣法の改正が繰り返され、
禁止されていた製造業でも派遣が可能となりました。
現在は、専門的な業種(秘書、通訳など26業種)については
期間制限の無い派遣が可能とされており、
他方、製造業などは、
同じ事業場では最長3年しか派遣が出来ない状態です
(*クーリング期間を設ける場合の例外は省略します)。
従って、B社としては、最長3年を超えて
派遣労働を使用することは出来ません(別の派遣労働者もダメです)。
これは、
「派遣労働はあくまでイレギュラーな制度である」
という前提にたっています。
それが、改正案では、全ての業種について期間の制限が一本化され、
全ての派遣労働者は、同じ会社の同じ課には3年しか働けなくなります。
会社は、別の人間であれば、また3年間の派遣労働者の利用が可能です。
ただ、派遣労働者としては、同じ会社でも別の部署であれば、
3年の派遣労働が可能です。
分かりやすくいえば、
B社の人事課で働いていた派遣労働者は、3年が経過すると人事課では働けなくなりますが、
B社が受け入れてくれれば、B社の経理課で働くことが可能です。
今回の改正案については、
今まで期間制限の無い職種で働いていた人の雇用環境が不安定になるなど、
様々な批判が労働組合側から出ています。
他方、政府は、雇用の安定を図るための措置を
法案に盛り込んであると説明しています。
だいぶ転職が盛んになりましたが、まだ諸外国と異なり、
多くの人が高校や大学を卒業した時点で「一斉就職」(新卒で就職)し、
中途採用の門が狭いのが日本の就職状況です。
また、長い年月、同じ会社に居ることで収入がアップしていく
「年功序列」が殆どです。
その流れとは異なる派遣労働者の待遇は悪く、
経済格差・貧富の差がますまず拡大していくという懸念も示されています。
そのような日本の雇用環境の中で、
今回の改正案がどのように影響を及ぼしていくのか、
注目しておく必要があると思います。