皆さんこんにちは、弁護士の藤田です。
エータ法律事務所では、不当解雇問題や、
未払い賃金の問題についても扱っています。
その中で、
一身上の都合で退職願いを一度提出したものの、
やはり退職は取りやめたいと思うが、撤回することはできるのか
といったご質問がよくありますので、
今回はこの問題について簡単に解説しておきたいと思います。
まず、「退職願い」というものが何なのか、少し整理してみましょう。
退職する際の意思表示には、合意退職の申し込みをする場合と、
一方的な解約の告知の性質のものの2つがあります。
前者であれば、合意による退職ですから、
相手が承諾しないかぎり退職の効果は発生しません。
ですので、この場合は、相手が受理して承諾しない限り、
それまでに撤回することも可能と考えることができます。
他方、後者の解約の告知というものであれば、
一方的な意思表示によって効果が生じますから、
相手が承諾するかどうかにかかわらずに効果が発生します。
この場合、期間の定めのない 労働契約であれば、
民法上は2週間以上前(月給制の場合に翌月以降の解約をするのであれば当月前半の間)の予告により、何の理由がなくても労働契約を終了 させることになります。
一般社会では、法律に書いてあるわけではありませんが、
前者の通知を「退職願い」、
後者の通知を「退職届」「辞職届」と呼ぶことがあるようです。
ですので、ご質問にある「退職願い」が前者の通知であったのであれば、
会社側が受理して承諾するまでの間は撤回できる可能性があります。
しかし、既に会社に受理されてしまったか、届けが後者の解約告知の性質であったなら、
既にしてしまった意思表示の効果を撤回することは難しいでしょう。
また、各会社での取扱いについては、就業規則などに記載されている場合がありますので、
そちらも参照してみてください。
ちなみに、撤回の話とは厳密には違いますが、
仮に退職願いの提出が、違法な退職勧奨によるものなど、
その意思表示に詐欺・脅迫・錯誤等があった場合には、
意思表示の取消しや無効の主張が可能なことがあります。
この問題は、退職強要の問題となりますので、また別の機会にご紹介いたします。
いずれにしても、
退職するかどうかは重要なことですので、よく考えて行動することが大事ですね。