賞与の支給について

皆さんこんにちは、弁護士の藤田です。


エータ法律事務所では、

未払い賃金の問題など労働相談についても扱っております。

これから年末が近づいていくにつれて、

だんだんと賞与(ボーナス)のことが気になってくるという方もいらっしゃると思いますが、

今回はその賞与に関するご相談例を紹介したいと思います。



今回ご紹介するのは、会社を退職することになったが、会社の人事担当者から、

支給日に在籍していなければボーナスを支給しない

と言われたのが納得できないというものです。


このご相談は、賞与の在籍日支給要件の有効性の問題といわれるものですが、

賞与(ボーナス)とはどのようなものなのかを

整理して考えなければなりません。



そもそも賞与(ボーナス)は、(各会社における位置づけにもよりますが、)

毎月一定の期日に定例の給与として支払われるものとは異なり、

労働協約や就業規則等、会社の賞与に関する制度によって

受給することが認められているものです。


ですので、賞与に関しては、不合理な差別となるものでない限り、

会社がその支給条件を制度として定めることが許されており、

支給日に在籍していなければ賞与が支給されないという要件が明確に規定されている限り、

そのような支給日在籍要件も有効と考えられています

(最高裁第一小法廷・昭和57年10月7日判決 〔労判399号11頁〕等)。


したがって、人事担当者の言うことが正しいのか、いちど会社の就業規則等をみて、

そのような支給日在籍要件が明確に規定されているのか

確かめる必要があります。


確認したうえで、もしそのような規定があった場合には、

支給日前に退職したことによって賞与が支払われなかったとしても、

違法とまでいうことは難しいでしょう。

反対に、そのような規定がない場合には、

退職日までの一定程度の賞与を支払うよう主張する余地もあるでしょう。 



ちなみに、以上のお話は自己都合退職の一般的な場合を主に想定していますが、

特別な事情などがある場合には、法的に争う余地は考えられないではありません。


実は、賞与の支給日在籍要件に関して、

会社の都合による整理解雇のような場合にも適用を認めていいのかについては、

学説上も反対説が少なくありません。


ですので、例えば、

会社が賞与の支給日前の日を意図的に設定して整理解雇を実施したような場合には、

争う余地が考えられるでしょう。


また、過去の判例をみると、

賞与の支給日が例年よりも大幅に遅れているような事情がある場合には、

支給日在籍要件が適用されないとしている判決

(最高裁第三小法廷昭和60年3月12日判決〔労経速1226号25頁〕)

もあるようです。


このように特別な事情がある方は、

賞与の請求が認められる可能性があるかもしれません。


皆様、ご参考になりましたでしょうか。


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