なんとなく知っている用語 - 原本、正本、謄本、抄本

皆さん、こんにちは。

梅雨も明けたようで、夏本番という感じになりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

 

暑い日が続くと、もうろうとしてしまいそうですが、法律事務所の仕事は間違えてはならない事が多いですから、しっかり気を引き締めてやらないといけません。

 

この間も事務内で作業をしているとき、書類の原本と正本、謄本と抄本といった用語の使い分けが、話題になりました。

 

なんとなく知っているようで、厳密にはよく分かっていない用語の一つかもしれませんね。

 

 

「原本」というのは、これはイメージしやすいと思うのですが、最初に作成されたオリジナルな文書そのもののことですね。通常、原本はこの世に一通しかないのが普通ですが、契約書など同じ内容のものを同時に2通作成する場合は、その同じ内容のものが2通とも原本ということになります。

 

そして、原本以外の文書は全て「写し」ということになりますが、この写しというものに、「謄本」、「抄本」、「正本」というものがあります。

 

その違いですが、写しを作成するときに、原本の内容全部を写しとったものを「謄本」、一部のみを抜粋して写しとったものを「抄本」と呼んでいます。そして、「謄本」のうち、公証権限のある者が公証した旨を付記した謄本を特に「認証謄本」といいます。

 

 

厳密にいうと、文書に意思内容を表示した人を「名義人」、文書を実際に作成した人のことを「作成者」といいます。ですので、Aさん名義の文書をBさんが写しとったという場合も、名義人はAさんですが、写し自体の作成者はBさんということになるのです。このような場合、Bさんが写しを作成するときに、原本と同じ内容を正確に写しとってくれるといいのですが、Bさんが信用できない人の場合には、本当に原本と写しが同じ内容なのか不安に思うかもしれません。「認証謄本」というのは、そのようなことがないことを公的な権限をもった人によって証明するという意味合いがあるといえるでしょう。

 

例えば、戸籍簿については市町村長に、公正証書については公証人に公証権限があるわけですが、それらの文書の謄本を取り寄せたときに、「これは~の原本と相違ないことを証明する」と市町村長や公証人の名前で付記されているのは、きちんと写しを作成しましたということを証明する「認証謄本」ということになります。

 

このようなことから、原本と認証謄本とは、名義人が示した同じ意思内容を表示するとみるのが通常ですが、やはり存在として原本と写しである謄本とは別ものであり、原本が一番価値のあるものとされています。

 

写しに細工がされているのではないかと疑われる場合には、原本を直接確認する必要がでてくるかもしれません。

また、原本の効力は、原本にしか認めることができないという場合もあります。

 

ただ、原本があっても、原本をある場所にだけ保管していて、それを外部に出すことができない場合もあります。例えば、裁判所の判決の原本は、裁判所に保管されています。

 

そのような時にも、原本と同じ効力を有するものとして文書を作成する必要があるわけですが、公証権限のある者によって特に作成されるものを「正本」と呼んでいます。正本も原本の全部を写すものですから、謄本の一種です。

 

裁判官が作成する判決という原本と、同じ効力のあるものを裁判所書記官が証明して作成するのが判決正本で、原本と同じ効力をもっていますから、それをもって強制執行などに利用できるという理屈になります。

 

 

いかがでしたでしょうか。

 

 

ちょっと紛らわしい用語の、細かい話でした。